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プログラミングが女子の未来をひらく

07プログラミングをはじめよう

プログラミングが女子の未来をひらく

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いまや、多くの人の生活に身近な存在となったコンピュータ。2020年には小学校、2021年には中学校、そして2022年には高校でプログラミング教育の必修化がスタートするなど、その発展はさらに加速しそうです。けれど世間では「女性はPCやプログラミングが苦手」というイメージを持たれがち。そもそもなぜ、そういったイメージがつくられ、また現実的にプログラミングに携わる人々に女性が少ないのでしょうか? 今回はプログラマの鳥井雪さんに、プログラミングと女性との関わりについて、お話をうかがいました。女性がプログラミングについて学べば、未来が変わるかもしれない?

プログラミングが女子の未来をひらく
鳥井雪さん
プログラマであり二児の母。女性がプログラミングを体験する機会をサポートするコミュニティ『Rails Girls Japan』のメンバーとして、ワークショップやオンライン講座の講師として活躍。女子に向けたプログラミングの本『ルビィのぼうけん』シリーズや『Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング』などの翻訳も多数おこなっている。

プログラミング的思考は、
生きるのを楽にしてくれる考え方

鳥井さんが翻訳された絵本、『ルビィのぼうけん』を拝読しました。プログラミングを学ぶための絵本ということですが、新鮮だなと思ったのが、コードなどの具体的なプログラミングの話は一切なかったことです。

プログラミングが女子の未来をひらく
『ルビィのぼうけん』は、フィンランドの女性プログラマ、リンダ・リウカスが、子どもがプログラミングを学ぶ糸口となるように作った絵本。絵本パートと練習パートがあり、4~11歳の子どもが親と一緒に楽しめるよう、取り組みやすい内容になっている。

鳥井さん:『ルビィのぼうけん』は、日本では”プログラミング的思考”とよばれることの多い、あらゆる場面で目的を達成するうえで大切な考え方にフォーカスした絵本です。コンピュータって単純な命令しか聞いてくれないんです。なので、やりたいことが大きな場合、コンピュータが理解できるまで細かく分解して、指示を出す必要があります。

プログラミングが女子の未来をひらく
例えば「サンドイッチを作って」とコンピュータに命令する場合、「具材を包丁で5mm幅に切る」「袋からパンを取り出す」など、ひとつひとつの作業を細かく分解して伝える必要がある。

鳥井さん:私は、同じように自分の大きな目標や夢、悩みも、小さく分解することができると思っています。その小さなひとつずつを達成していくことで、ゴールまでの道筋が見えてくる。コンピュータを扱うかどうかに関わらず、そういう考えで物事に取り組む姿勢を身につけることができれば、人生のあらゆる場面に応用できると思うんです。『ルビィのぼうけん』を読むことで、そういった考え方に小さい頃から触れていただけるとうれしいですね。

なるほど……。目的が大きすぎると漠然としてしまって、何から手をつければいいのかわからなくなること、よくあります(笑)。そういうときにプログラミング的思考を身につけていれば、人生で大きな壁に直面しても、まずは1ステップを踏むことができるようになる、ということですね。

鳥井さん:その通りです。私自身、社会人になってからプログラミングを始めたんですが、もし小さい時からプログラミング的思考を身につけていれば、もっと生きるのが楽だったろうなと思います(笑)。この考え方が思考のクセみたいに習慣化されることで、自分の手に負えないと感じる問題にぶつかっても、まずやれることはなにかを考えて、少しずつ手をつけることができるようになりました。

プログラミングをやり始めたのは社会人になってからだったんですね。

鳥井さん:「プログラマ=理系」というイメージがあるかもしれないですが、私、学生時代は文系だったんです。でもやってみて思ったのは、プログラミングって人間の言葉をコンピュータが理解できる言葉に翻訳して伝えないといけなくて、それって語学と通ずるところがあるなって。例えば日本語と英語みたいに、2つの異なる言語を橋渡しする経験があると、入りやすいかもしれないですね。

あと、この絵本では主人公が女の子なのも新鮮でした。正直、プログラミングって「男性が得意なもの」と捉えられがちですよね。

鳥井さん:現在も「理系は男子」「女の子はこういうの苦手でしょ」みたいなバイアスがかかっていますよね。

実際、2020年のアンケート調査(※)でもプログラマは男女比が8対2というデータがあります。なぜ女性のプログラマは少ないのでしょうか?

(※)出典:2020年版情報サービス産業基本統計調査/一般社団法人情報サービス産業協会(p.31)

https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2020.pdf

鳥井さん:その理由は「男性が多く、女性が少ないから」だと思っています。

なるほど。今の状況がまた少し先の状況を再生産していると。

鳥井さん:たとえばGoogleでプログラマと検索するとほとんどが男性の画像です。ロボットコンクールやPCを扱う部活、プログラミング教室でも本当に男の子ばかり。そうなると女の子はその場にいづらいし、将来の選択肢に最初から「プログラマ」を入れなくなる。子育てする親御さんにも「男の子のもの」という固定概念がある。そういう積み重ねが男女差をどんどん広げているんです。

実際、性別での向き不向きはあるんでしょうか?

鳥井さん:一般的に男女による資質よりも、個人差の方が大きいことがわかってきています。ただ、ギャップを作る外からの要因が大きすぎて、男女にどういう差があるのかわからないというのが、実際に教育に携わる人たちからよく聞く意見ですね。

そもそも同じスタートラインに立てていない状況なんですね。

プログラミングを男性だけの
仕事にするのはもったいない

女性がプログラミングを学ぶ必要性については、どう思われますか?

鳥井さん:いまや、コンピュータは社会を動かすために切り離せないものになりました。その仕組みをつくるのが男性ばかりだと、どうしても偏ったシステムになってしまうという問題があります。女性に関連する事柄がどうしても手薄になる。これは女性が、とあえて限定せずともいえることです。世の中には多種多様な立場の人がいて、その人にしかわからない困りごとがあるはずなのに、見落とされてしまうんです。

男性という限定された集団の中でシステムが作られる弊害があるんですね。

鳥井さん:これから作られていくシステムは、いろんな人の意見が反映されたものが作られるべきです。しかし当事者でないと、問題を問題として認識できないことがある。

だからこそ、いろんな立場の人が開発に携わることが、誰にとっても使いやすい仕組み作りにつながるわけですね。女性でいることで見えてくる問題、たとえば生理や出産、子育てに関連するものなど、いろいろとありそうです。

プログラミングが女子の未来をひらく

鳥井さん:それと、女性がプログラミングする意義はほかにもたくさんあって。かなり現実的な話なんですが、プログラマやIT関係の職業って高収入なことが多いんです。それを男性だけの仕事にしてしまうのは非常にもったいない。

たしかに現実的ですが、大切な要素ですよね。

鳥井さん:もちろん場所や環境にもよりますが、プログラマやコーダーは現在、多くの会社で求められています。各社が取り合いになって、募集の際に待遇をどんどん良くしているような状態です。

女性は仕事、結婚、子育てなどのキャリアプランについて悩むことも多いと思います。鳥井さんは、実際に今、子育てをしながらプログラマとして働き、同時に翻訳などの多様な活動をされていますよね。女性プログラマとしての働きやすさはどう感じていますか?

鳥井さん:プログラマという職種は女性のキャリア形成がしやすい職種だなと実感しています。まず働き方が場所にとらわれることがない。オンラインのコミュニケーションでモノを作りやすい職種なんです。会社に行くことに縛られないのは、子育てする立場にとってすごく強いと思います。もちろん、主体的に子育てを担いたい男性にも有利な職業です。

コロナ禍において、在宅勤務がしやすい仕事かどうかが、さらに重要視されるようになりましたね。

鳥井さん:それと、自分が勉強したり経験して積み上げた技術が、必ずキャリアとして積み重なっていくので、男女での評価が分かれない職業なんです。あとは働き方のコントロールもしやすい。最初に成果物として提出できる範囲を調整をすれば、週3で働くか週5で働くかというのは、時々のライフステージによって変えられる強みがあります。

まさに手に職を持っている強みがありますね。お聞きすると、女性にとって働きやすい要素が詰まっているように感じます。

鳥井さん:それに、たとえプログラマにならないとしても、プログラミングの知識があるだけでもできる事が増えるし、重宝されますよ。プログラマからすると、話している相手がコンピュータのことを少しでも知っているかどうかで、話の通じ方や発展度合いが全然違うんです。専門職にならなくても、その知識はどこかで活かせますし、何かを生み出す起点になります。

女性がプログラミングを学ぶことで、将来の選択肢が広がっていく気がしますね。

今も昔も、
プログラミングで
世の中を変える女性がいる

プログラミングの歴史でいうと、実は女性が活躍してきた事例がたくさんあるんですよね。鳥井さんが翻訳をされた『Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング』を拝見して、驚きました。プログラミングがでてきた当初は女性が多く活躍していた職業だったんですね。

プログラミングが女子の未来をひらく
『Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング』は、テック・ジェンダーギャップ(IT業界における男女格差)の解消に向けて作られた、女の子のためのプログラミング入門本。コンピュータの歴史の中で活躍してきた女性たちのストーリーや、今現役で働いている女性プログラマのインタビューが多数掲載されている。

鳥井さん:コンピュータが実際に使われ始めた1940年代にも、プログラミングを担うのは女性でした。男性はハードウェアを担当して、パンチカードの入力といった事務作業のように見られていた「コンピュータにどう命令するか」は女性の仕事だったんです。その認識のままENIAC(世界初の大型コンピュータ)への実際のプログラミングも女性の仕事になりました。不具合の原因究明、修正作業の手法として「ブレークポイント(プログラムの実行を強制的に一旦停止する箇所)」などを発明したのも彼女たちのひとりです。プログラマという新しい職業は、女性が参入しやすいものだったんです。

そうだったんですね。それが、プログラマの多くが男性になったのはいつ頃からでしょうか?

鳥井さん:家庭にコンピュータが備えられ、それを子供のころから扱う世代がプログラマとなるようになる1980年代になると男女比は逆転します。子供のころから「コンピュータを使うのを認められ、推奨された」のは男の子が大多数だったんです。

女性プログラマとして活躍された方の中で、特に印象深い人はだれですか?

鳥井さん:マーガレット・ハミルトンでしょうか。NASAのアポロ計画における中心的なプログラマとして、宇宙船のソフトウェアを作った女性です。彼女はコンピュータサイエンスという分野がなかった時代に「ソフトウェア工学」という言葉を一般化させた人なんです。

プログラマという職種を確立させた先駆者なんですね。

鳥井さん:実際、アポロ11号の着陸時にレーダーからの情報が多すぎてシステムアラートが鳴り響く中、重要な命令から先に実行するという彼女の設計によって事なきを得、着陸することができたというエピソードもあります。

めちゃくちゃかっこいいですね。現在活躍されている女性のプログラマさんについてもお聞きしたいです。

鳥井さん:ユニファ株式会社の取り組みは注目しています。「ルクミー(https://lookmee.jp/)」というサービスを開発して、保育士の業務をテクノロジーで支えようと活動をされていて。

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「ルクミー」は午睡チェック、検温、シフト管理など、保育関係者の業務をアプリでシステム化するサービス。子どもともっと向き合える豊かな環境を整えることを目的としている。

保育士さんって、共働きの家庭がどんどん増えていく中で、今後ますます必要とされている職業のひとつですよね。

鳥井さん:私も2人の子どもがいるので、保育士さんの忙しさは大変なものだなと感じます。ユニファでは、出欠連絡や連絡帳のやりとりがスマホでできるアプリを開発したりと、保育士さんや保護者の負担を軽減するシステムを作っています。この開発に女性のプログラマが関わっていて、お話を聞いたことがあります。

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