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ファッション×SDGs   わたしたちがいまできること

気候変動や海洋プラスチック汚染など、世界の課題となっている環境問題。わたしたちの生活に欠かせない服、ファッションをめぐっても、環境に与える負荷の大きさが指摘されています。また、途上国での生産工程における劣悪な労働状況も大きな問題に。

そんななか、「ファッションで自分らしさを表現したい」という気持ちを大事にしながら、サステナブルな社会をつくるための取り組みを広めていこうと活動しているのが、甲南女子大学の公認団体である「Sisterhood With」(シスターフッドウィズ)です。
今回は、シスターフッドウィズのM・YさんとN・Fさんにお話をうかがい、「ファッションを通じて、わたしたちがいまできること」について考えてみたいと思います。

甲南女子大生の中で服を循環させる「服交換会」の試み

まず、シスターフッドウィズの活動の目的や活動内容を教えてください。

M・Yさん:シスターフッドウィズは、甲南女子大生がファッションを軸に社会問題と向き合い、そのなかで自分らしさや新しいアイデアを見つけ、追求していくことのきっかけをつくるコミュニティです。

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M・Yさん(文学部メディア表現学科3年生・明徳義塾高校出身)

N・Fさん:週に1回、全員で集まってミーティングを開き、ファッションに関する社会問題に対して、解決に近づけるにはどうすればいいのか、どんなことができるのか、企画やアイデアを考えています。また、みんなで問題意識を共有し深めていくための勉強会も開催しています。

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N・Fさん(人間科学部生活環境学科2年生・須磨友が丘高校出身)

この団体が設立されたのはいつ頃なんですか?

M・Yさん:昨年卒業された先輩が2021年に設立したのがはじまりです。その先輩は学外のNPOに所属されていて、そこで得た価値観を甲南女子大の中でも広げたい、一緒に活動する仲間を増やしたいと思い、立ち上げたそうです。ちょうど設立時はコロナ禍で横の繋がりが生まれにくく、それもあってコミュニティをつくろうと考えたそうです。いまは1年〜4年生の14人が所属していて、みんな学部や学科もさまざまで、幅広いコミュニティになりました。

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これまでどのような企画を実施してきたのでしょう?

N・Fさん:学内では毎月、フリーマーケットを開催しています。昨年の学園祭でもフリーマーケットを開いたのですが、そのときは「Connect to the future」というテーマを掲げ、自分にとっては役割を終えてしまったけれど思い出が詰まったお洋服たちを、新たな持ち主へ繋ぐ活動をしました。また、服交換会も学内で定期開催しています。

服の交換会……?

M・Yさん:はい。着なくなった服を持ってきてもらうと、持ってきてくれた服+1枚の服と交換できる、というイベントなんです。

 

N・Fさん:着なくなった服は「捨てる」ものだと思っている人も多いのですが、誰かにとってはまだまだ活用できるものでもあったりしますよね。こうして服の交換をおこなうことで、甲南女子大の中で服の循環ができたらいいなと思っています。

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学内で定期開催する「服交換会」。

服を捨てないことでゴミを減らすだけではなく、必要な人に繋げることで服が愛される時間を延ばすことができる、というわけですね。甲南女子大の中で循環を生み出そうという考え方も、素敵ですね。

M・Yさん:フリマに出品する服は、最初は自分たちで集めていたのですが、次第に持ってきてくれる人が増えて集まるようになったんですよ。そのほかにも、自分たちでリメイクした服でファッションショーに参加させていただいたり、サステナブルなものづくりをおこなっているアパレル企業への訪問、工場見学を実施したりしています。

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産学連携のファッションショーイベント。着られなくなった洋服のリメイクでファッションショーに参加。
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下着メーカー「HEAVEN Japan」への企業訪問。「企業がおこなう下着のリサイクル活動についてお話を伺いました」(N・Fさん)。

企業訪問までおこなっているんですか!

M・Yさん:実際に生産側の方々の取り組みや考えを直接教えていただくことで、問題や課題についてより理解することができます。また、取り組みの実例を踏まえて、学生の視点から自分たちができることを深めて考えられるのも、企業訪問の面白さだと感じています。

とても活発に活動しているのですね。活動を通じて寄せられた反響は、どんなものですか?

N・Fさん:学園祭でのフリマでは、甲南女子大の学生たちだけではなく、地域の方々もたくさん参加してくださったんです。活動内容をお伝えすると、「私も応援するから買うわ〜」なんて言ってくださった方もいて……。環境について考えるきっかけづくりができたという実感が持てただけではなく、活動の輪を広げることができて、とてもうれしかったです。

 

M・Yさん:企業訪問の際には、授業の一環ではなく自主的な活動だと説明すると、担当の方から「すごいね」と関心されることもあって。大学生って遊んでいるような印象を持たれていることもあると思うのですが、「意識をもって取り組んでいる学生もいるんだよ」ということを知ってもらえた気がして、ちょっと誇らしい気持ちになりました(笑)。

ファッションが好きだからこそ、環境のことも考えたい

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とても積極的な活動をおこなっていますが、おふたりがシスターフッドウィズに参加したきっかけは?

M・Yさん:じつは、最初は気候変動や持続可能な社会づくりといった問題に関心が高かったわけではなくて。シスターフッドウィズに入ったのも、学内で普通に友だちとお昼ごはんを食べているときに、先輩に「こういう団体やねんけど興味ない?」「インスタ、フォローしてみて」と声をかけてもらったのがきっかけです。私はメディア表現学科に所属しているのですが、先輩たちの活動内容や発信している情報を見て、ここなら学科で学んだことをアウトプットできるかも、と思い、参加することにしました。 

 

N・Fさん:私も環境問題について考えたりしてこなかったのですが、生活環境学科の授業を通して、温暖化や大量生産・大量消費の問題を学んでいきました。そんなときに、シスターフッドウィズのチラシをもらって。そのチラシがめちゃくちゃかわいいデザインで、面白そうだから服交換会に行ってみたんです。そうしたら先輩たちもみんないい人ばかりで……深く考えないまま参加するようになりました(笑)。

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チラシやInstagramのデザインは自分たちで作成。「やわらかく、やさしい色合いで統一感を出すようにしています」(N・Fさん)とのこと。全体的に親しみやすさを感じさせるデザインになっている。

いまはとても精力的なのに、最初はそれほど問題意識を持っていなかったとは、すごく意外です。

M・Yさん:私の場合、行動を起こすきっかけになったのは、シスターフッドウィズで開催している勉強会でした。勉強会ではそれぞれが問題意識を持っている事柄について資料をつくって全体で共有するのですが、たとえば服の大量廃棄に関する写真を見たりするうちに、どんどんと身近な問題なのだと感じられるようになっていきました。

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M・Yさん:たとえば、いまはファストファッションが人気を集めていますよね。流行のデザインの服を安く、大量生産し、短いサイクルで販売するファストファッションによって、消費者はいろんなデザインの服を安価でたくさん買えるようになりました。でも、だからこそ捨てられる服も増えていて、廃棄される服の量は、日本だけでもおよそ年間100万トンを超えると言われています。
また、廃棄の問題だけではなく、生産の過程でも服は大きな環境負荷を生みますし、安く生産するために労働者に対する長時間労働・低賃金という問題も引き起こしています。
そうした問題をひとつひとつ知っていくうちに、まずは自分ができることからはじめなくては……と考えるようになったんです。

 

N・Fさん:最近は夏の暑さや異常気象など、心配も増えていっていますが、私はもともとファッションにとても興味があり、ファッション系の仕事に就きたいという思いをずっと持ってきたこともあって、服の大量生産・大量廃棄は深刻な問題だと感じています。でも、安い服をたくさん買うことや着なくなった服を捨てることが大きな問題に繋がっているということに自覚的な人は、まだまだ少ないと思います。それは、私自身もそうだったのでよくわかります。
だから、服を買ったり捨てたりするという「当たり前」を変えるために、その当たり前によってどんな悪い影響が出ているのかを、身近な人にわかりやすく伝えていくことが、まずは大事だと思っています。

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重要な情報発信のメディアであるInstagram。投稿は担当者を決めず、みんなで運用しているそう。「扱うテーマには重いものもありますが、興味を持ってもらえるよう、“お勉強感”よりも学生視点のとっつきやすい発信を心がけています」(M・Yさん)。

サステナブルな未来のために、すぐに始められること

なるほど……。ただ、何から始めたらいいのか、わからない人も多いと思うんです。なので、誰でもすぐに始められるサステナブルな活動があったら、ぜひ教えてください。

N・Fさん:たとえば「エコバックを携帯する」というのは、すぐに始められるんじゃないかな?お気に入りのエコバッグを探すのも、きっと楽しいと思います。私は、神戸のベビー・子ども服のブランドであるファミリアが好きなんですけど、そのファミリアでお気に入りのエコバッグを見つけました。折りたためるので、ちっちゃなカバンのときでも入れられるのがポイントです。

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N・Fさん愛用のエコバック。折り畳むとこんなにコンパクトに。

M・Yさん:「マイボトルを持つ」ことも、始めやすいと思います。以前まではコンビニや自販機でペットボトルのお茶やお水を買って飲んでいたのですが、プラスチックごみの海洋汚染について学ぶうち、少しでも環境負荷をかけないためにマイボトルを持つことにしました。ちょこちょこ飲み物を買うこともなくなったので、無駄遣いも抑えられて一石二鳥です。ちなみに、マイボトルのカバーは、小学生ぐらいのときにおばあちゃんがつくってくれたペットボトルカバーです。

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M・Yさん愛用のマイボトルとエコバック。

そのカバー、とってもかわいいです。おばあちゃんの思い出も詰まった、ステキなものなんですね。

N・Fさん:そういえば、きょう履いているスカートは小学6年か中学1年のときに買ったものなんですよ(笑)。

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え、すごい!

N・Fさん:昔は気に入っていても、飽きてくるときがあるじゃないですか。でも、そこですぐ捨てずに取っておくと、もう一回、その魅力に気づくときがあると思っていて。それに、いま気に入っていて着回している“一軍の服”と、着なくなってしまった服を引っ張り出して合わせてみると、意外と使える!ということもあります。いまはいろんなブランドやショップがSNSでコーディネート例を発信しているので、それを参考に手持ちの服でいろんなコーディネートのパターンを考えるのも楽しいはずです。

 

M・Yさん:ネットで簡単に服を買えるし、安いとついつい買いたくなってしまうけれど、買ってはみたものの使えない場合も多いですよね。だから、買い物をするときは、考える時間を持つことが大切。私は、なるべく実物を手にとって、レイヤードで着回しできるかな?とか「これならお姉ちゃんも一緒に着れそう」とか、活用できるかどうかを考えてから買い物することを心がけています。

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長く愛着を持って着つづけるためにも、着回し力はたしかに大事かも。

M・Yさん:でも、環境のためにいちばん簡単に始められることって、「いま持っている服を大事にすること」だと思うんです。なんでも気に入ったものを買うのではなくて、いまあるものをちゃんと愛着を持って、役目を終える日までちゃんと自分で使い切る。それがいちばん大事だなって。

 

N・Fさん:もし買い物をしようというときも、製品表記をぜひよく見てみてほしいです。いまは、使用済みペットボトルなどプラスチックをリサイクルして加工した繊維でつくられた服もありますから。 

 

M・Yさん:タグをよく見てみると、結構発見があるんですよね。「こんなリサイクルがあるんだ」とか「地球にやさしい染料があるんだ」とか。

キャンパスの外にも広がる活動を

ちょっとした行動を見直すことだけでも、サステナブルな選択に繋がるんですね。しかも、おふたりのお話をうかがっていると、楽しく取り組むことができそうです。

N・Fさん:シスターフッドウィズでの活動自体が、とても楽しいんですよ。私は仲の良い同級生と一緒にいる時間が多かったのですが、この団体に入ってからは、先輩とも後輩とも団体の活動のことだけに限らず、いろいろな話をするようになりました。

 

M・Yさん:学部・学科もバラバラなので、それぞれが専門の分野で学んでいる知識や視点から意見が聞けるのは、個人的にすごく楽しいです。あと、シスターフッドウィズの緩やかな雰囲気がとても居心地が良くて。

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団体活動が、良い出会いの場になっているんですね。では最後に、これからやってみたいことがあれば教えてください。

N・Fさん:服交換会などのイベントにもっと多くの人に参加してもらえるよう、SNSでの情報発信などもがんばっていきたいですし、あとは学外での企画も増えてきているので、そちらにも力を入れていきたいですね。

 

M・Yさん:いまはちょうど神戸須磨シーワールドさんと、神戸を拠点に印刷・アパレル支援をおこなっている企業のマテックスさんとのコラボ企画を進めている最中なんです。同じようにサステナブルファッションに関する取り組みをしている他の団体とも連携を深めていったり、これからも新しい企画を考えていきたいです。

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Sisterhood Withについてはこちら(団体Instagramへ)

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