人のコンプレックスはじつに多様です。SNSの拡大などにより他者と自分を比べることが多くなり、大きくなったコンプレックスに心をくもらせている人も少なくありません。一重だ、卑屈な性格だ、顔が大きい……。そんな各々のコンプレックスを個性として愛し、ハッピーな在り方を音楽で説く注目のガールズバンド「CHAI」。「コンプレックスはアートなり」というコンセプトを掲げる彼女たちが、甲南女子大生の悩みをポジティブに変換! 他人との違いを愛し、自分を前向きに変えるためのアドバイスをもらいました。
CHAI
ミラクル双子のマナ・カナに、ユウキとユナの男前な最強のリズム隊で編成された4人組、『NEO – ニュー・エキサイト・オンナバンド』、それがCHAI。彼女たちに触れた君の21世紀衝撃度No.1は間違いなく『NEOかわいい』バンドCHAIだよ!
全員がそれぞれ違う
コンプレックスを抱えるからこそ
「かわいい」の価値観を広げたい。
まずはCHAIについて教えてください。「コンプレックスはアートなり」というコンセプトを掲げるようになったきっかけはなんですか?
マナ:私とカナは双子なんだけど、ふたりとも同じ高校に通っていて、軽音楽部に入部したの。そこでバンドって楽しいなって思って。高校の同級生だったユナと、大学で同級生だったユウキといっしょにバンドやろうよってなって。
カナ:その時にバンドの大きなテーマを決めようってなったんだよね。
マナ:そう。私たちにしか考えられないような価値観の提示が音楽とともにできたらなあって。新しいポップな考えって、音楽だったら届けやすいよねって。私たちの共通点は、それぞれにそれぞれのコンプレックスがあるってこと。でもそれってじつは素晴らしい個性で、みんな違っていて当然。それを訴えることができるのって、完璧じゃない私たちなんじゃないかって思って。
ユウキ:うんうん。
マナ:私たちはみんなそれぞれがコンプレックスを抱えていたけど、4人が出会って互いのコンプレックスを「そこがいいんじゃん!」って褒め合えたことで、自分を認められたり、個性を意識することができたの。日本におけるステレオタイプな「かわいい」っていう価値観に対しての怒りや苦しさってすごくあるから、かわいいという範囲を広げたい。その魅力をとどけるために「NEOかわいい」というワードを掲げて、みんなに届けたい! って思って活動してる。
人生の全ては神様が
きっかけをくれたもの。
『SURPRISE』に込められた思いとは
5月に『SURPRISE』という曲をリリースされましたよね。ストーリー性のあるMVが印象的でした。
マナ:あれは実際にあったエピソードを元にしてるの。北米ツアー中に、衣装とか物販の在庫とかを積んだトレーラーが盗まれて! でも、世界中のみんなが寄付をしてくれたり、現場でサポートをしてくれたおかげでツアーをやりきれたの。想定外すぎる出来事だったけど、これって神様がサプライズを与えてるんじゃないかって思って。
サプライズ=贈り物ですか?
カナ:うん。トレーラーを盗まれたのは大変だったけど、CHAIをサポートしてくれたみんなからの愛に気づけたように、ネガティブな出来事って、何かを知ったり学んだりするきっかけを神様が与えてくれてるんじゃないかって思えたの。
マナ:私たちのトレーラーが盗まれる事件はなかなかレアだけど、日々の小さな事件やネガティブな出来事ってたくさんあると思う。髪型が決まらないとか、お腹の調子が悪いとか。でもこれって、何かを知るためのサプライズなんだって。人生のいろんなつまづきは、神様が与えてくれたギフトなんだって。自分達の経験から思ったことをもとに『SURPRISE』はできたの。
たしかに、髪型が決まらない時は新しい帽子に出会えるチャンスかもしれないし、お腹の調子が悪い時はおいしい野菜をたくさん食べるイベントデーにできるかもしれない。ネガティブをチャンスに変える意識とその面白さを、歌の中で伝えられているんですね。
見た目、性格、生き方……
CHAIが抱えていた
それぞれのコンプレックス
みなさんは今もコンプレックスを抱えていますか?
マナ:私はうまく生きれないことがコンプレックスだった。っていうのも、バイトとかもいろいろやってきたんだけど、オール失敗で。金銭授受はミスするし、謝れないし。生きていく上で必要な資料のやりとりなんかもできない。でも、いろんなことが本当にできないけど、それを補うだけのネガティブとポジティブとバカを持ってて、思いっきりやる力がわたしにはあると思ってる! だから、うまく生きていけないけど、そんな自分が超好きで超嫌い!
ユウキ:私、小学生のとき、腐って真っ黒なヘドロみたいな人間だったの。自己肯定感どころじゃない、全てが不満、私は嫌われているんだとか、どうせ私は……って卑屈な自分だった。でもある日、友達から「自分の事愛していいんだよ」って言われた事をきっかけに、自分のままでいる事を素直に愛してみたの。呪文のように唱えてた(笑)。そしたらヘドロまみれだった心がどんどん澄んだ小川のようになってきて! 人からどう見られるかの印象論はあれど、今はコンプレックスはないんです。何もかも挑戦したいし、失敗もすべて受け入れられるノープライド状態。そのうえでもっとよくしていこうって思える。だからいま自分にコンプレックスを抱えている子も、いつかそれが良さなんだと気づけるはず。大丈夫だよって、みんなにハグしてあげたい!
カナ:私は、自分の顔が大嫌いだった。マナもそうなんだけど、私たち双子は一重ののっぺりした平安顔。それがすごく好きじゃなくて。テレビや雑誌、観るもののすべてに、目が大きくて、鼻も高くて通っているのがかわいいっていう、世の価値観というか「答え」みたいなものがあって、それに縛られていた。だからアイプチが手放せなかったし、いろんなメイクも試したし、整形したいくらいだったの。
私も一重がコンプレックスなので、気持ちがよくわかります。
カナ:でも、海外に行くようになって一重の目を愛せるようになった。海外だと肌の色も髪の色も、体型も顔つきもホントにバラバラで。そこで一重って東アジアにしかいないし、この容姿が魅力なんだって知ったの。だから今は一重がいい。誰とも違う顔は魅力的だから、容姿に対してコンプレックスを持ってる人は一度海外に行ってみてほしいなって思うな。いろんなものを観て聴いて、価値観をアップデートしてほしい!
ユナ:私も学生時代、容姿のコンプレックスがあったの。顔の面積が大きいのが嫌で、髪で顔の横を隠して、その髪をメガネに入れて、とにかく見える顔の面積を小さくしてた。でもCHAIのみんなが「顔見せるのが可愛いんじゃん!」って言ってくれた。私は、みんなへのファッションセンスの信頼がすごかったから、こんなにおしゃれな子に言われたらやるしかない! って(笑)。輪郭だけじゃなくて手も足も大きかったのが嫌だったけど、いいねって言ってくれたから、そこも個性だなって思えるようになった。
メンバーが魅力を見つけてくれたんですね。
ユナ:そうなの。内面的な部分も、心の持ちようでポジティブにすることもできると思う。いまでも「自分はだめだなあ」って思うこともあるけど、自分のなりたい自分というか、悩んじゃう自分も私なんだよね。そんな私がハッピーになるために、どうすればいいのかって日々生きてるなかで学んではいて。悩むこと自体は悪くないし、考え方ひとつで全部変えることもできるよ! っていうのは伝えたいかな。
一問多答!?
みんなのコンプレックスを魅力に変える
CHAIからのアドバイス
今回CHAIさんにお話をうかがえるということで、学生たちが実際に抱えているコンプレックスをアンケートで募集しました。ぜひ、ポジティブに考えるためのアドバイスをお願いします!
カナ:私も一重を気にしていたから言えるけど、一重は魅力!
マナ:一重はさ、笑った顔が誰よりも笑ったようにみえるんだよね。
ユウキ:一重を生かすメイクにしたらどう? 自分の目をよく見て、その個性をどう生かすか研究してみたらいいかも。一重の目が生かせるメイクを考えられたら、ぜひ発信してほしいよね。そしたら、他の一重の人も「素敵!」って思えるんじゃないかな。
マナ:すっぴんがメイク後と違うのは特権だと思うな! この人は、すっぴんに自信がないんだろうなって思うんだけど、差があるのはかっこいいよ! だってそれはメイクがすごく上手な証拠だから。
ユウキ:ギャップが気になるなら、もとの肌質とか、眉の形とか、自分の持ってるパーツの個性を生かすメイクにしたらどうかな。メイク好きな気持ちはすごく素敵だと思う!
ユナ:それか逆にもっとメイクの幅を増やすとか! 日によってメイクをガラッと変えちゃうの。バキッとクールな日もあれば、フワッとかわいい日もある……みたいな。幅をふやしたらきっと、ギャップ自体を楽しめるんじゃないかな。
ユナ:大前提が優しい子なんだろうな。だってさ、人と比べるって、人のことをよく見ていて、人のいいところに気づける子なんだってことだもんね。
カナ:相手の長所をどんどん口に出していったら? 「あなたのそこいいよね!」って相手のことを褒めると、長所を褒めてもらえるようになるし、自分もきっと変わってくるよ。
ユウキ:本当だよね! この子、人のいいところを見つけられるところが長所だから。
マナ:この子はさ、見栄っ張りな自分を気にしてるけど、少なくとも、ものすごい嘘じゃないと思う。だって「やりたいです!」って言ってできてるんだもん。
ユウキ:作らなくても、じつはこの子はすでにすごい強くて、かっこいい人間なんじゃない?
マナ:そうは思ってないけど言ってしまうってことは、じつはそうなりたいと思っている自分がいるのかもしれないよね。認めたらいいと思うよ、そんな自分を。大丈夫、嘘ついてないよ。そこに踏み出す勇気があればもっと自分に向き合えると思う。
ユナ:うわ〜〜!
マナ:わかるわかる!
カナ:私たちすぐ顔が赤くなるからすごくわかる! 一緒だよ〜!!
ユウキ:私は赤くならないから、むしろ羨ましいって思うよ! それって感情が表に出しやすいってことじゃん。全然問題じゃないと思う。赤くなってることをただ言われただけなんだけど「顔が赤い=悪い」って結びつけちゃってるんだろうな。
ユナ:私はね、先に言っちゃうの! 「わ〜、赤くなっちゃった〜! 今、顔がりんごです!」って。自己申告制。ほんとにすぐ赤くなるから。
ユウキ:それいいね! ユナみたいに自分で先に言っちゃうか、それか、顔赤いよって言われたら「でしょ!? 顔赤くなっちゃうんだよね〜!」って返せばいいんじゃないかな? だって赤くなるところも含めてそれが私なんだからさ。
意志が弱い=もはや仏⁉︎
コンプレックスを
ポジティブに言い換えてみよう
「コンプレックスはアートなり」というバンドのコンセプトもそうですし、特に楽曲『N.E.O.』では様々なコンプレックスをポジティブな言葉に変換していくMVが印象的でした。そこで次は、みんなが抱えがちなコンプレックスを用意したので、ポジティブに言い換えていってもらいたいです!
それでは発表お願いします!
【毛が濃い → 最強のボディーガード】
【コミュ障 → 神のずのう(頭脳)】
【目の下のクマ → 引き算の天才】
【一重まぶた → みわく(魅惑)のまぶた】
【オンチ → オンリーワン音程】
【歯並びが悪い → スマイルインパクトビューティー】
【肥満 → ビッグバン成長期】
【ぼっち → ワンダフルオンリーワン】
【意志が弱い → もはや仏】
【器用貧乏 → ベストオブメタモン】
言葉が変わるだけで、コンプレックスに抱いていたネガティブな感情が和らぐというか、むしろ魅力的に思えてきますね!
コンプレックスは
克服するんじゃなくて「受け入れる」
それが自分を愛することに繋がる
最後に、コンプレックスを愛するためのアドバイスをお願いします。
マナ:ずっと一貫して言いたいのは、あなたが気にしているコンプレックスはあなたにしかない個性だよ! ってこと!
カナ:個性をコンプレックスにしちゃうのって、学校がそうさせてるのもあると思う。小学校から高校って、教育の場に個性を求められないことも多いし、同調圧力っていうか、どれだけ周りに合わせるかを気にさせてしまう場所じゃんか。なのに、大学では個性を求められるから、難しい。わからなくなるのも無理ないよ。難しいし過酷だと思う。
マナ:そうだよね〜。
カナ:で、就活になったらみんな同じ黒髪で就活スーツ着なきゃいけないのに、個性を出せっていうんだもん。
確かに、自分の個性について考える時間を世の中が与えてくれない気がします。
マナ:大学の4年間で、自分の個性や、その個性を出せる場所が見つかるといいよね。それが私たちには音楽でありCHAIだったけど、これはなんでもいいと思う。自分や仲間となにかをつくるのでも、バイト先とかでもいいよね。
ユウキ:場所もそうだし、自分は自分でいい! って思えるかどうかかなって私は思う。「自己肯定感を上げよう」って、それってつまり「自己肯定感が低いいまの自分は『だめ』」ってことになっちゃうじゃん。完璧じゃないところもそれが自分なんだ! って思えることがスタートなんじゃないかな。自分が自分のことをどう思うかによって周りも変わるんだっていうのは、私はCHAIでの経験を通して自己肯定感を持てるようになって気づいた。
コンプレックスを持つ自分、それ自体を認めて受け入れることで、前向きに変わっていけるし、周りとの関係もいい変化がおこるってことですね。
マナ:まず自分の見方を変えたらいいよね。自信や根拠がなくても「絶対いける」って。自分は自分のままでいいんだよって。
ユウキ:自信を持つための根拠を外に探しすぎてるのかもしれないね。「こうじゃなきゃダメなんだ」「これを持ってるからいいんだ」みたいな。比較するんだったら昨日の自分と比較するほうがいいんじゃないかなって思う。
ユナ:コンプレックスは自分の意思。自分が気にしてるから、それを言われたときに「あ、コンプレックス突かれた」ってなっちゃう。本当は相手は褒めて言ってることだってあるかもしれないし。自分の捉え方次第だなって。自分を受け入れて捉え方を変えれば、きっとどこにいてもキラキラ輝ける自分でいられると思うよ!
CHAIオフィシャルサイトはこちら
Another voice
09コンプレックス上等!