誕生から四半世紀、女の子達のコミュニケーションツールとしてあり続けている「プリ」。女の子の「かわいい」の価値観は日ごとに移りゆくものなのに、どうしてこんなに女の子達の理想を叶え続けられてきたのでしょうか? 「MELULU」や「CAOLABO」、「#アオハル」などでおなじみ、プリ機シェアNo.1のメーカー「フリュー株式会社」にインタビュー。プリ機の歴史と最新事情を聞いてみました。
「盛り」が絶妙!
女の子の欲望に応え続ける
プリ機のヒミツ
知人にプリマニアがいるんですが「今プリ機はフリューって会社が一強状態なんです! 『盛れ』の具合が絶妙にきれいで、すごいんですよ」と、偶然教えてもらったことがあって。今日はプリ機の歴史やフリューさんのプリ機のヒミツを教えてください!
平野さん:わあ、うれしいです。よろしくお願いします! まずはプリ機の歴史ですが、1995年に他社メーカーが初期のプリントシール機をリリース。当時の若者を中心に人気を得て、社会現象となりました。1997年に参入したフリューは、じつは最後発なんです。
わずか2年のあいだに、さまざまなメーカーが同様の機器を次々にリリースしたんですね。
平野さん:最初の機種は正直言ってあまり売れなかったのですが、99年にリリースした「ハイキーショット」という機種から、フリューの認知度も徐々に上がりはじめました。当時、浜崎あゆみさんのブームによる「美白に写りたい」というニーズに応えるためにストロボを導入したんです。以後、どの機種にもストロボが搭載されるようになりました。
白く写りたい! とにかくデカ目! から
「自然な盛り」「クアンク」までの変遷
プリといえば、理想の顔に近づける「盛り」ですが、盛りの変遷はどんなものでしょう?
平野さん:2000年前後からはしばらく「白く写る」ことが主流でした。「盛り」という単語が出てきたのはそのあたりからでしょうか。徐々に瞳が大きくなっていって、この時代は「とにかく目ヂカラで盛れる」機種が人気でした。その後、2011年以降は、アイドルブームなどを受け自然で立体感のある写りがブームに。いわゆる「ナチュラル盛り」の到来ですね。
変遷を見るとけっこう盛り方も変わってきているんですね。最近の動向はいかがですか?
平野さん:最近は再びしっかりめの写りが主流です。最近の若者トレンドの源泉でもある韓国カルチャー、今台頭著しい中国カルチャー、どちらもしっかりメイクするのが流行になっていますしね。とはいえ、現実離れしすぎない盛りのバランスになっています。しっかり顔を可愛くしますが、ナチュラルな「抜け感」なんかも大事にしていて。
抜け感……!
平野さん:「クアンク」という言葉をご存知ですか? 韓国語で「着飾っているような、着飾っていないような」を意味していて、韓国発の「手が込んでいるのに無造作感のあるスタイル」を表しています。日本でもファッションやメイクに、このクアンクスタイルを取り入れるのが注目されはじめています。最新機種の「97%」はこのクアンクスタイルに着目した世界観、写りを表現したプリ機です!
ファッションの要素をプリにも取り込んでいるんですね!
トレンドを先読みしてプリ機をつくる
「マインドJK」の存在
毎年新しい機種を出して、女子たちの「かわいい」にマッチした機種をつくっていますが、「かわいい」ってすごく移ろいやすくて曖昧なものじゃないですか。最新の「かわいい」はどう情報を得ているんでしょうか?
平野さん:実はフリューには「マインドJK」がいるんです……! なので、女の子たちの「かわいい」について情報を得ているというよりは、「かわいい」がわかる、提案できるという方が近いと思います。
ま、マインドJK ?
平野さん:現役のJKと同じ感性を持ち、最新の「かわいい」の潮流を肌感として理解して、「次はコレが来る!」とトレンドの一歩先を読むことができる凄腕の社員がいるんです。プリ機は開発に1年ほどかかってしまうので、「今流行っているもの」を取り入れたプリ機は、リリースされる頃になるともう時代遅れになってしまいます。
しかも、若い女性たちの「かわいい」の価値観はあっという間に変わるわけですもんね。
平野さん:ええ。なので、リアルタイムのニーズに応えるというよりも、次のニーズを予想して機種に取り入れていく必要があります。しかも「今の若者ってこうだよね」という上から目線ではなく、心の底からJKの気持ちで、かわいいものにテンションが上がらないといけない。そのために、普段からティーン向けのメディアやSNSのチェックはもちろん欠かせませんし、こまめに現役の女子高生、女子大生とのグループインタビューを行って常に女の子たちとコミュニケーションをとっています。
「クアンクスタイル」も1年以上前にキャッチしていたってことですもんね。何者なんだマインドJK ……。当事者の意識でものをつくることができているからこそ、フリューさんのプリ機は評価を得ているんでしょうね。
多様な「かわいい」に応える世界観。
最新プリ機を撮り比べてみた
お話をうかがっていたら、最近のプリ機はどのような「かわいい」を表現しているのか実際に見てみたくなりました。
平野さん:それでは、4機種ほど撮り比べてみましょうか。
平野さん:まずは「CAOLABO(かおラボ)」です。瞳や肌などが甘めのテイストに仕上がる機種ですね。撮影者ひとりひとりの顔を分析し、4つの顔タイプに分類して、それぞれにあった盛れる写りを提案します。自分が思い描く理想の顔を調整によってつくりやすくなっているので、プリでの盛りを通じて、理想の自分を表現できますよ。ちなみに、2021年8月には「CAOLABO2」が出る予定です。
平野さん:次は「EMMYCHUU(エミーチュー)」ですね。かわいらしい印象の丸みのある目元と、トレンドの白肌でドーリーな仕上がりになる写りが特徴です。さらに、好みや気分に合わせてフィルターやスタンプなどが変わる「ドリーミー」、「チャイボーグ」といった5つの世界観から好きなコースを選択できるんですよ。
平野さん:お次はこちら、「PURi BOX more」。他のプリとは少し雰囲気の異なる、大人っぽい写りが特徴です。目元の立体感と、さらっとした陶器のような肌でおしゃれな写りを実現しています。
平野さん:最後は先ほども話にあがった、最新機種(2021年6月時点)の「97%(キューナナパーセント)」ですね。目鼻立ちの立体感は強めでしっかりとした盛れ感はありつつも、柔らかい雰囲気を加えて隙を生んだ新しい抜け感のある仕上がりが特徴なんです。
おお〜! 案外素人目にも、写りの違いって分かるものなんですね。盛れ感だけでなく筐体デザインも含めて、機種ごとに異なる世界観が作り込まれているのが分かります。
平野さん:これは、女の子の「かわいい」が多様化しているからなんです。浜崎あゆみさんなど、昔はファッションアイコン的な一大スターがいましたが、2015年あたりからはアイドルグループがたくさん輩出されたことやインスタグラマーなどの出現で、絶対的な存在がほとんどいない。なので、たくさんの「かわいい」に応じられるように、多様な世界観、写りの機種がなければいけないんです。
プリを撮る「体験」自体が価値になる。
今でもプリ文化が衰えないワケ
スマホのカメラとアプリの機能向上も著しいですが、現在でも「プリを撮る」ことは若者に浸透し続けています。プリ文化が衰えないのはどうしてだと思いますか?
平野さん:やはり「体験」があるからではないでしょうか。スマホでの撮影やアプリでの加工はその場の思い出を撮る行為ですが、プリは撮った経験自体が価値になります。友達と遊んで楽しい瞬間をスマホに残して、「楽しかったね」という気持ちを忘れないためにプリを撮って思い出を保存するというか。
プリを撮ること自体がエンタメのひとつということなんですね。
平野さん:そうです。それ自体が思い出作りになります。なので、プリとカメラアプリは競合ではないとフリューでは考えています。撮りたいシーンによって女の子たちは使い分けているし、プリもアプリも両方使うのが当たり前です。
思い出がプリとして具現化するのは、まさにそうですね。一昔前は印刷されたプリを交換したり、「プリ帳」に貼って保存するのがトレンドでしたが、SNSメインの今、撮った後はどんな風にプリでコミュニケーションが取られるのでしょうか?
平野さん:いちばん多いのはスマホケースに挟んで持ち歩くケースですね。だからこそ、撮ったプリを印刷するシール紙のデザインにもこだわれるようになっています。旧来のプリ機のように複数の写真を分割して印刷する、そういう筐体もありますが、今はこうして、任意の文字と1枚画像がトレカのように印刷されるものも人気です。
なるほど! トレカだったら携帯も容易だし、なによりかわいいですね! ガラケーの裏の蓋を外して、バッテリーに恋人とのプリを隠すように貼っていたのが懐かしい……(笑)。
平野さん:ぎゃー! 懐かしい(笑)!
平野さんもやってましたよね!?……あ、そっか。当時の「プリのあるある」をこういうふうに何年たってもできるというのが、まさに「撮ること自体が思い出」であることの証拠ですね。
平野さん:フリューがモットーとしているのは「全てのガールズ(年齢制限・性別なし)をハッピーにすること」。このガールズとは、マインドです。年齢制限も性別も縛りはありません。かわいいものが好きで思い出を楽しく残したい心をもつ全ての人に、フリューのプリ機で遊んでほしいなと思います。
お話を聞いて、久々にプリコーナーに行きたくなりました。なにか嬉しいことがあった日や好きな人と遊んだ日、撮って帰らないかと誘ってみようと思います!
文学部 メディア表現学科についてはこちら(大学公式サイトへ)
フリュー株式会社
プリントシール、キャラクター・マーチャンダイジング、コンテンツ・メディア、ゲーム/アニメと、様々なエンタテインメント事業を展開。また、プリントシール機市場トップシェア(2020年夏 自社調べ)の実績を生かした「ガールズトレンド研究所」では、「ありそうで、なかった“かわいい”で、すべてのGIRLSにSURPRISEとHAPPYを♡」をコンセプトに、リサーチ・企画からプロモーションまで総合的に“かわいい”をプロデュースしている。ダイソーやファミマプリント、カメラのキタムラ、浅草花やしきとの取り組みなどの実績がある。
詳しくはこちら(企業サイトへ)
※記事に記されている所属・役職等は取材時のものです。既に転出・退職している教員、卒業している学生が掲載されている場合があります。
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